ウヤミリックとブウタロウ

毎晩少しずつ『極夜行』を読んでおります。
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極夜行

極夜行

ページをめくる度の失望

『極夜行』にすっかり魅せられています。(貼り付けたものとは別の)前回のブログで私はこう書いています。

角幡氏はたどりついた拠点から、一か八かという覚悟でさらに北を目指しました。
食料となる獲物を手に入れることはできるのか?という緊迫した場面で昨夜は本を閉じました。

その緊迫感を共にしながら読み進めました。
ページをめくる・・・・失望
ページをめくる・・・・失望
ページをめくる・・・・失望
次第にじりじりとし始め、苦しいような気持ちになり、そのうちページをめくるとすぐにそのページ全体に目を走らせずにはいられなくなりました。
とっさに希望の芽を探そうとするのです。
サッとです・・・
サッとみて手応えがなさそうだなとなると、はなから失望を携えそのページに向かうようになりました。心はざわつき切ないのです。
傍観者たる私でもそんな具合なのです。
現地でその時を重ねていた角幡氏の失望の深さはいかばかりか!

旅の相棒

 旅と呼ぶにはあまりに過酷なこの行程の間、常に角幡氏に沿い、行動を共にした心強い相棒がおりました。
「ウヤミリック」という名の犬てす。
氷に閉ざされた極寒の地、しかも極夜の暗い道中を忠実に橇を引きながら北の果てまで来たのです。
ゼーハーゼーハーと荒い息を吐きながら荷物を引っ張ってきたのです。
リザードの猛吹雪の中もテントの外でじっと待つ犬。
角幡氏の排泄物もエサとして喜んで喰らってしまう犬。

 その犬の食料となる獲物が全く獲れない日が続いていました。
そればかりか、今後の旅の日程によっては角幡氏自身の食料も心細くなってきました。
(そうなってしまった理由があるのですが、あらすじは必要以上に書かないようにしますね。)

 ウヤミリックが息絶え、角幡氏の食料と化すのも時間の問題となってきたのです。

ウヤミリックよ

 絶対に犬を死なせない、旅を終わらせないと固く決意してここまで来たが、現実として獲物がとれず、暗闇のなかで体力がむしり取られていくうちに、私は犬の命や自分の旅に段々無関心になっていった。そしてもはや犬の死肉は完全に計算のうちに入っており、犬が将来死ぬことを想定することで私は自分が死ぬ恐怖から逃れることができていたのだ。

 犬はげっそりと痩せこけ、惨めな身体つきになっていった。前日よりも明らかに腰回りの肉が削げ落ちており、日一日と小さくなっていくのがよく分かる。雄々しい狼のようだった顔つきも飢えた狐のように卑屈になっていた。
 身体つきだけではなく行動にも今まで見られなかった顕著な変化が現れていた。私に物乞いのような仕草をするようになったのだ。
 前日の行動中に休憩しようと橇に座って行動食の袋を開けたときだった。犬はゆっくり立ちあがり、のろのろと私の横にやって来て、お座りの姿勢をしたまま、カロリーメイトやチョコやナッツを頬張る私の様子を、力を失ったくぼんだ目でじーっと見つめたのだ。

涙腺崩壊です。

 角幡氏は犬の身体を頻繁にさわり痩せ具合を調べます。
触られるのが大好きなウヤミリックは恍惚の表情をして目をつぶります。
しかし、その尻や骨のまわりにも肉はほとんどなくなっているのでした。
毎夜犬の死を想像し、眠れぬ夜が続きます。

生きている犬

 ウヤミリックのことではありません。
ウヤミリックも含む、極北の村シオラパルクの犬たちのことです。
この村の犬と人間との関係です。
角幡氏はこれを‘’欺瞞の無い関係”と表現しております。

 厳しい土地で生き延びるため村人は犬を必要としており、犬はなくてはならない働き手であり、協同の生活者でもあります。
そこには、欲望・・・・・一方的に可愛がったり、愛玩物としてねじ曲げ作り変えて自分の満足に代えるような行為・・・・が入る隙はありません。
村の犬たちは、言うことを聞かなければ殴られもし役に立たなければあっさりと絞殺される、そんな存在です。
 一方犬たちにしてみても、人間の役に立つこと、役立とうとすることでその生存権を確保するのです。
ここでは生きることが最上位の德目である」と角幡氏は書いていますが、それは人間と犬双方にいえることなのです。
文明圏での犬の多くが歪んだブリーディングによって産み出され、生かされていることに比べればシオラパルクの犬たちはるかに自律的に生きているといえるでしょう。

ブウタロウ

 私は今、布団に足を突っ込み座椅子にもたれながらスマホを操作してブログの下書きを打っております。
我が家のわんこブウタロウはその布団に乗っかり、一心に自分の手や腹周りを舐めております。
チワワとパピヨンのミックス犬だとのこと。コンパクトサイズのわんこです。
まさしく愛玩犬として産まれた犬。
次男がペットショップで一目惚れして衝動買いしたわんこです。
川崎に拠点を移した今はそばに置けないということで我が家で預かっているのです。
ストーブの前が大好きで、いつも呑気そうに眠っており、毎晩私の布団にもぐってきてはホカホカの身体を寄せて眠るのです。
ですから本書で、うなりをあげテントも埋まる程の強烈なブリザードの場面を読んだとき、私は、ウヤミリックが外に放置されていることが信じられませんでした。
テントに入れてやらんのか!と・・・・。
しかし、
シオラパルクで育った犬はそんなところへは入らんのですね。

 いよいよ肉が削げ落ち、寒さに帯する耐性も弱り震えているウヤミリックに角幡氏が、「中に入れよ」と声をかけ促したときがあったのですが、ウヤミリックはテントの中を嫌がり入ってはきませんでした。狭いところに閉じ籠る習性がなかったからでしょう。
 我が家のブウタロウとウヤミリックは全く別の生き物です。
そして私はウヤミリックのような”別の生き物たる犬”を全く知らなかったことに気づきました。

 ブウタロウの重さと温かさをそばに感じながらこの体験記を読む私は、健気なウヤミリックを思い愛おしみ、日々弱っていく姿に心痛めたのです。

で、ウヤミリックはどうなったのか?
二人のその後について・・・それは本書にてお知りになってくださいませ。