たあぼちゃん

青い目のお人形

 青い目のお人形・・・。
寝かせるとまぶたを閉じる。
私が子どもの頃ですから、昭和30年代の製品でしょう。
誰が買ってくれたのか?
どんなタイミングでのプレゼントだったのか?
記憶はありません。
f:id:kyokoippoppo:20190614193347j:plain:w250:left記憶は、この人形を肌身離さず持っていたというところから始まっています。
そして、その時には金髪の少女だったはずのこの人形は、髪を刈られ『たあぼちゃん』と命名されておりました。
そう、男の子にされていたのです。
この画像は、我がアルバムの写真をカメラで撮ったものです。

手術跡に虐待の跡

 肌身離さず持ち歩いてはいましたが、果たして可愛がったといえるのか??
裁ちばさみをねじ込んで、唇に穴を開け水を飲めるようにしてやりました。
同様に、おしっこの穴もあけました。
顔にはこげ跡が・・・。線香花火の火花を浴びせたのです。
なんでそんなことをしたのでしょうか?
悪ふざけをしたのです。
そうしていじくりまわしながら、お風呂に入れ、一緒に眠り、おでかけの時はかごに入れ持ち歩いたのです。
そんなことを何才ころまでやっていたのか?

 横浜から町田市に越して来たときもこの人形は捨てられずついてきました。
私が高校卒業の頃ですから、もちろん『たあぼ』は触られもせず顧みられない存在でしたが、ずっと和室の天袋の中に転がっていたのです。

箱の中から・・

 私は結婚して故郷から遠く離れたこの地へやってきました。
母は折々に私の好きなカステラや、夫の好きな漬物や、ラップや雑巾やらの生活雑貨を箱にいれて送ってくれました。
ある時送られてきた箱の中に『たあぼちゃん』がいたのです。
げげげ!!
身辺整理をする過程で処分に困ったこの人形を、母は送って寄越したのです。
「京子があれほどかわいがった人形をどうしても捨てられなかったよ。」
というのです。
『たあぼちゃん』は我が家に来たものの、裸ん坊のまま放置されておりました。f:id:kyokoippoppo:20190614200204j:plain:w330:right
たまたま帰省した次男はそれを見るや
な・・なに??この不気味なもの。」と声を挙げました。
娘は、人形が異様な姿のまま放置されていることが気になったのでしょう。
「せめてカモフラージュしたら?」と言って頭に毛糸を乗せ、そこいら辺にあった布を巻いたのがこれです。
これも何故か写真に撮ったのですね。アルバムに貼ってありました。

カツラ

 いついかなる心境によっての行動かはわかりません。
私は『たあぼ』の頭にべったりとボンドを塗って頭髪を貼り付けてやりました。
お洋服を作るまではできませんでしたが、手持ちの古着の袖の部分を2箇所縫い止めて洋服代わりにしてやりました。
f:id:kyokoippoppo:20190614203111j:plain:w150:rightしかし、失敗です。
すっかり色黒さんの『たあぼちゃん』に茶色い髪は似合いません。
また、(写真は頭髪が浮き上がった状態で撮った一枚である・・・と言い訳をしたいところですが、どうあれ)貼り付け方もよろしくなくて不気味度はアップしてしまいました。アハハ・・笑ってやって下さい。
そして、またもや放置。

  *  *  *
 さて、これはこのあいだの話です。
孫がやってきました。
いつも何かしらのお人形を連れて遊びに来るのですが、その日は急に思いついて来たらしく、
お人形を連れて来なかったのです。
「お人形で遊びたい。」「ママ、持ってきて。」
「我慢しなさい。わざわざもって来ないよ。」
「持ってきてえ・・」
そんなやりとりを聞いた私は孫に次のように言いました。
「お人形出してやるよ。でも・・・その子を見て泣かないでね。
「泣かないなら、出してやるよ。」
単純な3歳児は無邪気になかない、なかないと言いました。

だっこ

f:id:kyokoippoppo:20190614202309j:plain:w330:left『たあぼちゃん』は久々に子どものみずみずしい手で抱かれました。
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ひどいカツラだ!!と思われるかもしれませんね。孫が振ったのですよ。そしたら髪が総立ちになってしましました。(言い訳)

美容手術

 ごめんよ たあぼ。
最後の手術だ。耐えるのだ。
『たあぼちゃん』は髪をべりべりと剥がされて、黄色い髪になりました。
真黄色のもっと明るい髪色にしたかったのですがね。なにせ手持ちのもので済ませましたから。

我が家に来たら孫はこのお人形で遊びます。
お地蔵さんのお人形も仲間入りします。
先日は「たあぼおうちに持って帰る」とまで言いました。
すかさず娘が「だめだめそれはだめ。たあぼちゃんのおうちはここなの!!」
と言って阻止しました。

『たあぼちゃん』は私といっしょに棺桶に入る運命なのです。