この本おすすめ
『「子どもの本」のもつ力』を読み、清水真砂子氏おすすめの本を読んでみたくなりました。
- 作者: 清水真砂子
- 出版社/メーカー: 大月書店
- 発売日: 2019/06/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
しかしその前に、
私は我が家の本棚に収められている、私チョイスの「子どもの本」も、久々に手を取りたくなつたのです。
数冊ある中から迷わず『メイの天使』を引き抜きました。
- 作者: メルヴィンバージェス,Melvin Burgess,石田善彦
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1997/04
- メディア: 単行本
- クリック: 5回
- この商品を含むブログを見る
子どもの本といっても、小学生高学年以上にふさわしい内容です。
我が子たちが中学生のころに「この本を」、と思い購入しましたが、多分読まずじまいだったと思います。
物語の中へといざなわれて
主な登場人物は、
少年タム
浮浪者である老婆ロージー
老婆に忠実な犬ウィニー
メイは?
はい、メイもいますね。
彼ら以外の登場人物も、それぞれが明確な輪郭を持っており大変魅力的です。
人物像をはじめ、風景、空気、たちのぼる匂い、天候などの描写も丁寧で、本の世界をよりしっかりと共有できるのです。
タムは怯えきって、近づいてくるふたつの影を見守った。それは女だった。古いオーバーを着て、腰には縄を巻き、コートの下には何枚も重ねたボロボロの服を着こんでいた。頭の後ろのこぶのようなものは、くしゃくしゃにもつれた汚れた灰色のかたまりで、長くのびた髪は洗ったこともくしをいれたこともないらしく、まるで体の一部のように見えた。その女の片方の頬は遠い昔に負った傷のために歪み、変形していた。頭は死人のように片側にかしぎ、その目は周囲のものを冷たく見つめていたー石、地面、犬、そして空を。
老女ロージーの姿です。
町で見かけるようになったこの老婆は、いつも顔を伏せ、あてもなく歩いてはゴミの山をあさってる。
しかし、タムが目をそらせたときに横目で彼をうかがっているのです。
本書の中で人物たちは、悩み、苦しみ、笑い、考え動いてゆきます。
彼らの関係についてをここで語ってしまうのはもったいない。
感動的な映画を見たりしたときに、その余韻が残り、しばし身動きとれなくなるように、この本を読みおえた私もその世界にしばし留まって、動けなくなりました。
涙が流れて仕方ありませんでした。
不思議ですね。
実体としては、文字が並んでいるだけの紙の塊である本。
その中身はフィクションで、彼らは実在しないのです。
なのにその人物の思いに惹かれ、運命に涙する。
彼らの、喜びや悲しみ、喪失感に激しく共振してしまうのでした。
さて、これはタイムスリップの話です。
過去を変えることはできなくても、未来を変えることはできそうです。
涙を流しつつ読み終えましたが、結末は心あたたまものでした。
* * *
さて わたくし・・・清水氏のような発信力はないながらも、ここにおすすめの本を紹介し、記事として残すことにしたのです。
第一弾は『メイの天使』でした。