「共生」というスローガンの傍らで

ウポポイの開幕近づく

 ウポポイの開幕が近づいております。
そんな2月の18日、
北海道新聞に次のような記事が載りました。
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アイヌ民族の遺骨返還についての記事も併記されておりましたが、こちらは今記事との関わりが薄いのでフレームから外しました)
ウポポイ開幕に向けて、今後PRが加速していくことが予想されます。
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【ウポポイの主要施設】
国立アイヌ民族博物館
先住民族アイヌを主題とした日本初の国立博物館アイヌ民族の視点で語る多彩な展示で歴史や文化を紹介します。
国立民族共生公園
体験型フィールドミュージアムとして、古式舞踊の公演や多様な体験プログラムを通じて、アイヌ文化を体感できます。
慰霊施設
アイヌの方々による尊厳ある慰霊を実現するための施設として、ポロト湖東側の高台に整備されます。

ainu-upopoy.jp
画像と施設概要はことらからお借りしました。


この施設は、かつて北海道を始めとする北方圏で暮らしていたアイヌ民族の文化を学び、共生の精神を育むために作られました。
道内で初めての「国立博物館」となります。


このような立派な施設ができること、またそれによってアイヌ民族の文化や精神に、多くの人が触れることができるのは良いことだと思います。

しかし、ここへ注がれる期待は何より「集客」である。
つまり経済的な効果なのであろうと強く感じてしまいます。
人を呼ぶ以上は、美しく意表をつくデザインが必要で、いかにもアイヌ的であるという紋様や、踊りや、歌やでお客様を感心させ楽しませなくてはなりません。

となればこれは、「観光」に極めて近いものになるのではないでしょうか?

そして、「観光」に近づけば近づく程、
本来のアイヌ文化からは遠退いてしまうと感じます。
これに関しては以前にも書いておりますので、ここでは重ねて書きません。

kyokoippoppo.hatenablog.com
で、次の記事は同日のもの。小さく出ておりました。

二つの民族

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これに関しても書いております。
説明は極々簡単にさせていただきます。
kyokoippoppo.hatenablog.com


 そもそも、ここ北の大地には和人が入植して来るまで、アイヌ民族狩猟によって糧を得て暮らしておりました。
そこへ本州から和人たちがやってきます。
この人たちは、本州において自分の土地を持てなかった農民たちです。
開墾によって自分たちの土地を得るためやってきたのです。
彼らの使命は「開墾」です。(屯田兵は国防という使命も負いました。)
森が拓かれ、そこが農地となればなるほど、アイヌの人々は糧を得るための場を失ったのでした。

 二つの民族(決して一つなんかではない!!)は争ったり、制圧したり、憎しみあったり、ときには分かち合ったり、交わったり・・・
そうして時を越えてきました。
観光地に身を寄せ彫り物を売る人もいたでしょう。
自分のルーツを隠し、蔑みの視線から身を守った人もいたでしょう。
日本人の生活に馴染み、生活を共にするなかでアイヌ民族の血は和人のものと混じり薄くなっていきました。

今や本物のチセに住む人はいません。
鮭を主食にしている人もいないことでしょう。


鮭を獲らせて

隣接する紋別市に住まうエカシが、昨年、儀式に使う鮭を伝統にのっとった漁法で捕獲しました。

申請をして許可を得る、ということをあえて行わず捕ったため、告発され、書類送検されたのです。
これは、申請をしなかったエカシの主張です。(2019年・9月13日の道新より)



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もちろんこのような行為に対しては、賛否両論ありましょうし、法に照らせば、告発、書類送検の流れは仕方ないといえます。

 ただ、日本人と同化する道を歩んできたアイヌの人々ではあるものの、自分たちの精神性や先祖が大事にしてきた伝統を取り戻したいという気持ちは理解できます。






そして、共生とはこのような「理解」をいうのではないか?
と思うのです。
伝統の作法は、博物館の中に収めておくものではなく、それぞれの土地でそれぞれの生活の中で守られ、受け継がれてゆくのが本来の姿だと思うのです。
「ウポポイ」 「ウポポイ」とその開館をアピールし、知名度をあげようとやっきになっている関係者は多いことでしょう。
でも、耳を傾け眼差しを向けるべきなのは、このような土地土地、ひとりひとりの中に息づく「思い」なのではないでしょうか?


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今回目にした「アイヌ民族」に関わる新聞紙上の二つの記事は、何だかとても遠い。
遠くて遠くて、ベクトルは逆向きだ。

そんなことを思ったのでした。




それにしても、コロナウイルスに関わる混乱・・・いつまで続くのでしょう。
ウポポイも五輪も大丈夫かいな??


写真は、家の前で撮った「つららツリー」です。