犬ものがたり⑥・・・『やまとゆきはら』

手に入れた一冊

 ネットで見つけて、どうしても手に入れたくなり、初めてのヤフーオークションを通して手に入れた絵本・・・・それは
『やまとゆきはら』(関屋敏隆作・福音館書店)です。
白瀬南極隊の探検を描いたもの。

作者の関屋氏が、取材の過程で興味を持ったという二人のアイヌ人・・・・樺太犬を調達し犬係りとして探検に参加したアイヌ人は、『熱源』の主人公「ヤヨマネクフ」であり、その友人「シシラトカ」です。
【第162回 直木賞受賞作】熱源

【第162回 直木賞受賞作】熱源

ネット上で見ることのできた数ページの絵も、大変に魅力的でした。
ほとんどの本を図書館で調達する私ですが、在庫がある確証も得られぬまま、図書館は閉館となりました。
私は待ち切れませんでした。

とうとい届いた『やまとゆきはら』・・・・大満足です。

すばらしい

 作品は、入念な取材や資料研究を経て事実に忠実に描かれています。
(もちろん想像に頼れざるを得ない部分もあり、いくらかの創作部分もあります。)

作者である関屋氏は、探検に参加した二人のアイヌ人に興味を持ち、作品はこの二人を軸にして描かれました。
『犬ものがたり④』では、白瀬探検の大雑把な経緯を青字で記述しましたが、
このストーリーが、しっかり再現されておりました。
また描かれた絵により、更に具体的により印象強く伝わるのです。
kyokoippoppo.hatenablog.com

大判の本の見開きいっぱいに描かれた絵の、なんとすばらしいこと。

いっぺんに魅せられてしまいました。


犬が置き去りにされる場面まで読み進めたとき、

私は、
「もう、だめだ!」
と声をあげました。

切なくて声をあげました。
口を覆いながら静かに読み終えると、もう再び本を開くことができませんでした。
心しなければ開くことはできない・・・そんな一冊なのです。
それほどに心が揺さぶられたのです。

二人のアイヌ

 今回はその本を数日ぶりに開きました。
ブログ連載中の『犬ものがたり』に飛び入り参加する形で、あるページを紹介するためです。

湾から上陸し、南極点を目指す場面です。

雪に埋もれて眠る犬たち。

一面の雪野原に連なる小山。
輪郭もおぼろげな白い凹凸。
これらは身体を丸め眠る犬たちです。
白い布のようになって、生きている気配もかすかに・・・・それでも息をしています。
重たいそりを引けるところまで引いてきて、くたびれ果て、仲間どうし身を寄せ合い雪の中に伏せる犬たち。


 以前、一匹の犬と共に北極圏を歩いた記録である『極夜行』を読んだとき、荒れ狂うブリザードのなか犬が外で寝かされることに驚いた私です。
しかし、このような犬たちは、そもそも狭いところに入って眠ることの方が不自然で、嫌なのですね。

極夜行

極夜行

食料が不足しやせ細ってしまった旅の相棒「ウヤミリック」。
寒さに対する耐久性もなくなってきたウヤミリックの姿を見かねて、角幡氏がテントに誘う場面があるのです。
しかしウヤミリックは、せまいテントをきらって決して入ろうとはしなかったのです。
kyokoippoppo.hatenablog.com


 場面をもどしましょう。
雪に埋もれるようにして眠る犬たちのページです。

その中央には二つの人間の顔が・・・。
犬たちに囲まれて、積荷のおおいにくるまっているのがヤヨマネクフシシラトカです。
なんと二人はテントに入らず外で寝ているのてす。

積荷のおおいが飛ばぬようおさえているのは、横倒しにされたそりの滑走部分です。
二人は密着して横たわり、その二つの身体をはさむようにしてこの滑走部分(ランナー)が置かれております。
隙間からの冷気を防ぐべく、積荷のおおいで身体を巻くようにしている二人。
それを守るように、さらに囲むのが、雪の凹凸のようにしか見えない犬たちです。
その後ろには小さなテント。
こんな装備で!と思うような粗末なテントが設営されております。

雪野原を進めるだけ進み、人も犬も体力がつきた地点でテントをはりました。テントはせまく、白瀬、武田、三井所の三人はだきあうようにしてねました。山辺と花守は、2台のそりとつみ荷のおおいを風よけにつかい、毛皮のふくをきて外でねむりました。

『やまとゆきはら』より

山辺はヤヨマネクフ、花守はシシラトカです。
樺太育ちの二人は寒さには強かったでしょうが、南極という極寒の地で、外で寝たとは・・・・。

何と強靭な身体でしょう。

二人分のテントはなぜ用意されなかったのでしょう?
いくら粗末なテントでも、あるに越したことはないでしょう。
アイヌ人の二人が外で寝ているというこの図は何なのか?
皆で南極を目指すという、一丸となった行動のさなかにも、この二人は犬並みの扱いであったのでしょうか?

本書には、このあたりのことについては書かれておりません。

山辺と花守には、南極探検に参加しているという、大きなよろこびがありました。

と語られております。

  *   *   *

 次回は、犬の置き去り場面を紹介しましょう。
心痛む場面ですが、私はここに着地したい。
そして、切り抜いて保存した北海道新聞に掲載された記事も、紹介したいと思っております。
追記1
 この記事では、Amazon商品の書籍画像と、過去記事のサムネイル画像やらで4冊の本の表紙が顔をそろえました。
思いを寄せた作品たちがつながりを持って姿を見せており、とてもうれしいです。
 


追記2
 実はこの本の魅力を伝えたく、雪に埋もれて眠る犬と、ヤヨマネクフとシシラトカが積荷のおおいをかぶって寝ているページを写真に撮りました。
しかし著作権的に良いのだろうか??
と気になり調べたところ、参考になる記事が見つかりました。
我が弱小ブログが少々の違反をしたからといってさほどの影響はないでしょう。
が、、、
違反と知って事を行うことそのものが正しくありません。
昨日、公開直前の記事を下書きに戻しました。
そしてページの絵を、別の方法で伝える努力をしてみたのが本日公開のこの記事です。
青字・斜体で表記した部分です。

yuccow.hatenablog.com