トゥトゥ!!
絵本『やまとゆきはら』を参考にしながら、記事を書き進めましょう。
- 作者:関屋 敏隆
- 発売日: 2002/10/15
- メディア: 単行本
「トゥトゥ!」
・
・
・
「トゥトゥ!」というかけ声は、『その犬の名を誰も知らない』の中にも出ていましたね。
アイヌ語のかけ声だそうです。
そのかけ声は今でも、犬ぞりを扱うときに使われているようです。
「トゥ」は進め。
「ブライ」は止まれです。
この表紙の犬たちの表情をご覧下さい。
何とも愛らしく、お茶目な顔つきの犬たちです。
舌を出し息を切らし、重たいそりを曳く犬たち。
走る喜びに満ち満ちているように感じます。
しかし、このような走行が続くわけではありません。
本のページをめくりながら、雪のはらを進みましょう。
そりは何度もひっくり返りました。
隊員たちは、食料や防寒服などを下ろし荷物を軽くしてやりました。
荷物を置いた場所には目印の旗を立てました。
針のような雪が隊員たちの目を刺します。
零下25度の寒さで犬の鼻はマヒ。
後のそりは前のそりを見失います。
凍傷で傷ついた犬の足からは血が流れ、後のそりはその跡を追いながら進んだのです。
1月20日より南極点を目指して進んできた隊員たちですが、9日目の28日。
隊員たちは、もう、動けなくなってしまいました。
犬たちは走れなくなってしまいました。
やまとゆきはら
南緯80度5分、西経156度37分のその場所で、白瀬は突進を断念しました。
見渡す限りの雪野原を『やまとゆきはら』と名付け、日章旗を立て日本の領土とすることを宣言したのです。
(あとになってこの場所は、陸地でなく棚氷の上であったことが判明します。
また、第二次世界大戦後のサンフランシスコ平和条約第2条において、日本国政府は南極地域の領有権を放棄しております。その他各国の領有権主張は1959年に締約された南極条約の第4条により全て凍結されて今日に至っています。)
(写真はWikipediaより引っ張ってきました。その出どころは、 毎日新聞社の「昭和史第3巻 昭和前史・日露戦争」のもの)
やまとゆきはらに留まること14時間。
帰路となる下り坂を急ぐ隊員たち。
食料が乏しくなってきたのです。
ヤヨマネクフとシシラトカは自分たちの行動食を犬たちに分けてやりました。
しかし、それにより犬たちは下痢を発症し、後続のそりは下痢の跡を頼りに進む始末。
3頭の犬は血を吐き弱ってしまったため、つなから放してやりました。
その3頭は、もう、そりを追うこともできませんでした。
流氷
1月31日、基地に到着。
2月2日夜、海南丸も湾にやってきました。
天候が悪化。
流氷が次々に押し寄せます。
流氷で湾が閉ざされる前に離れなければなりません。
2月4日早朝、隊員と6匹の犬が乗り込んだとき・・・
白瀬は出航を命じました。
ああ、涙がこぼれてきます。
風ははげしく、波は大きく、流氷も集まってきました。
山辺も花守も、泣くような思いをしながら、犬たちの遠ぼえの声を聞きました。
船がはなれるにつれて、犬たちは近づけるところまで走ってきては、尾をふり、ほえつづけました。
『やまとゆきはら』より
氷の先端まで走り寄る犬たち。
前足を開き、呆然と立ちつくしています。
しかし無情にも「海南丸」は動き始め、黒味がかった冷たい海水が船と犬たちを隔てます。
船の艫(とも) から身を乗り出しているのは、ヤヨマネクフとシシラトカにちがいありません。
かろうじて乗船した犬たちも、仲間を求めるように後ろ足で立ち上がり吠え立てています。
(絵本のこの場面の様子です。)
海南丸が帰国したのは6月20日のことでした。
ものがたりは、このあと物悲しいエピローグへと続いてゆきます。
『蘂取はるかなり』
さて、私はここで、ようやく切り抜いた北海道新聞の記事を紹介できます。
ある日目に留まり、よほど余裕の無かった時であったか?指で引きちぎっておいたのです。
『犬ものがたり』の連載記事を書こうと決めたとき、その切り抜きも是非活用しようと思いつきました。
が・・・・どこへ行った??
切り取った記憶はあるものの、いったいどこに・・・?
乱雑にストックされていた切り抜きたちをぶちまけて探す作業にいそしんだ末に・・
出てまいりました。
(黒いものは我が家の愛犬ブウタロウです。ストーブの前で呑気に寝てばかりいるワンコです。)
(写真を撮るときには、さすがにハサミでカットしましたよ。)
ところが、日付が記載されておりません。
まあ、指でちぎり取った行為を考えれば、日付メモまで気が回らなかったのは当然でしょう。
日付無しでよいかあ??
いやあ!!何とか調べられないかしら??
・
・
ダメ元で検索して見つけたのがこちらのブログです。
moto-tomin2sei.hatenablog.com
なんと!記事の執筆者である谷内紀夫氏は、はてなのブロガーさんでもあったのです。
海に飛び込み飼い主を追う犬たちの姿は、南極で置き去りにされた犬たちの姿と重なります。
北方領土について、私はずっと無関心でした。
しかし、『熱源』や『やまとゆきはら』(あとがき・解説)により、「サハリン」(樺太)への関心が喚起されたことで、北方に位置する島々へも関心が向くようになりました。(サハリンは領土問題の枠外ですが・・・)
「取り返せ!!」
という姿勢ではなく、
遠い昔よりロシア人・アイヌ民族・オロッコ民族・ギリヤーク民族・和人がそれぞれの境界をゆるく保ちながら暮らしていた時代を偲ぶという姿勢です。
これは、以前紹介した『伝蔵と森蔵』にもつなるテーマです。
- 作者:小池 喜孝
- メディア: -