長靴はいて潮水かぶって

町の一大事業「放流」

 5月15日より「放流」が始まっております。
サロマ湖内で育てたホタテの稚貝を湖から引きあげ、外海(オホーツク海)まで運び、撒くのです。
全ての漁業関係者に加え、多くの漁業関係者でない人々まで巻き込んでの一大事業です。

漁業関係者ではないわが夫・・・還暦過ぎて腰痛と五十肩の痛みを抱える夫にまで、「手伝ってほしい」とのお声がかかり、夫は初日より2時起きで出動です。

 20年も前に・・。

 20年も前に私はこの仕事を体験しております。(湖から引きあげる作業)
当時の記述が残っています。
それを参考に、過去の様子を思い出してみましょう。

 *  *  *
 朝は(これって夜か?)2時も過ぎたら起き出して、酔い止め薬を胃袋に流し込み、浜仕事用の衣類や小物を車に積んで漁港へと走ります。
外ではすでに、ゴーゴーという車の騒音が、まだ明けきらぬ町に響いています。
全ての車が列をなして登栄床漁港に向かっているのです。

 港に到着。
 船はエンジンを作動させ、灯りをともし待機しており、そこに必要なもろもろを運び込む漁師さんや、あいさつをかわす人たちが行き来し賑やかです。
甲板にて手早く中手袋、ゴム手袋、腕抜き、合羽、ライフジャケットなどの装備を済ませると、船は次々と港内から出て行きます。
いったい何隻の船が出てゆくものやら・・・。
それぞれの作業拠点へへさきを向けて、船はスピードをあげます。
耳はエンジンの音だけに支配され、冷たい潮水が船の上下に合わせるリズムで甲板を濡らします。
この季節の夜明け前はまだまだ寒く、カイロを貼った身体を震わせて身を縮め、吹きつける風と潮水の飛沫を頬に感じるのです。

 作業開始時間は決められています。

のしという太いロープに、船の横を固定して、無線を待ちます。
私たちも立ち上がり、稚貝の入った資材が引き上げられると同時に動き出せるように、甲板の上のそれぞれの持ち場で、足を踏ん張りその時を待つのです。
タプンタプン・・・船は波に揺れています。
静かなれどいよいよだ・・・という気持ちで張り詰める時間。

「ホタテ作業船、ただいまより作業を開始して下さい。」
始まった!!
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その時から数十分、ただひたすらにほろうのです。
私が体験したころは、「ざぶとん」という資材が、多かったと思います。
絵ては、左のものがそれです。四角い座布団状の資材です。
一ヶ所に穴があるので、逆さにしてそこから稚貝をふるい落とします。
不明瞭を避けるため、かごの輪郭のみをざっと描いてありますが、湖水から引き上げられたばかりの資材は、重く塩水を含み、細い生物やネロネロが貼り付いていて、慣れないうちは、ひとまとまりて持つことさえ難儀しました。
汚れて手にあまる座布団の様子と、足の踏み場もない甲板の様子が見て取れる画像が、こちらのブログに載っておりました。
チロッと覗いて見てくださいませ。

sinseimaru38.blog.fc2.com

「土管」と呼ばれる連段の資材も、引き揚げるや
縫い付けてあるヒモをひき、ただちに開いた面を下にして貝を落としてゆくのですが、ヒモを見つけることに手間取り、それを引く抜くのに手間取り、下手すりゃ相手と回す向きが合わなくて、資材を一ねじりしてしまいそうになったり・・・・。
中腰の作業のため、腰も背中もビリビリと痛かったなあ。
定量ほろうと帰路は各船ごとに帰港します。貝の鮮度を落としてはならないからです。

貝が痛まないよう、まといをかけて、(水にぬれたこいつも、重い重い重い!!)海水をかけながら港に戻るとこれを降ろします。
稚貝は今度はトラックに積まれ、外海に面した湧別港に運ばれてゆくのです。
この作業を4回から五回繰り返すのです。10時過ぎには作業終了です。

 とにかく大変な重労働でした。
でも、重労働をしているという実感が私を奮い立たせてくれました。
湖に顔を出す真っ赤な太陽を日々おがめることも嬉しいことでした。タイミングによっては眺める暇もないことしばしばでしたが・・・。

   *  *  *
 

私はおふとん 

 今は、資材も作業のやり方も違うのかもしれません。
2時になると夫が起きて支度をしている音が聞こえます。
その音を聞きながら私はぬくぬくお布団の中。

がんばれー。ご老体の夫よ。がんばれーこの仕事に従事している私の友よ!


16日の新聞に放流の記事が出ていました。
湧別漁協は11日間で、2億5千万粒を放流する予定だそうです。



 この稚貝ですが、仕込みは夏に行われます。
そちらの仕事はかろうじて現役なのですよ。
放流よりはよほど楽な仕事といえますが、私は毎度ヘロヘロになるのであります。
今年も声がかかるのかな?
kyokoippoppo.hatenablog.com