WRONG PLACE WRONG TIME

 とってもおもしろかった本について書き残すことにしました。
タイトルは『ロング・プレイス、ロング・タイム』。
図書館の棚で見つけました。

カタカナ表記の「ロング」から「長い」しか発想できない程度の英語知識しか持ち合わせていない私ですが、このタイトルの「ロング」は、WRONG ・・・・間違った、誤った、事実に反するという意味なのです。
タイムリープ×ミステリ×家族小説とのこと。

ふむふむ、どうだろ?
おもしろいかな?

で、とってもおもしろかったのです。
で・・・・記事に残そうと思ったのです。
ミステリ小説なので、結末を明かすことはいたしません。

サマータイム

 物語は、サマータイムに関わる時間調整によって幕を開けます。
日本で暮らす我々にとって、言葉は聞いていても実感の伴わない制度ですよね。
www.casio.com

サマータイム(夏時間)とは、夏季に標準時間から時計を1時間早めて、夕方~夜の明るい時間を1時間増やすことで、太陽の出ている時間を有効利用するための制度です。例えば、サマータイム中の19時は通常時の20時となるため、夏のまだ明るい夜の1時間分を活用できるというわけです。

(上記のウェブページより)

 時は2022年10月30日。
サマータイムの終わりの時。
ここが物語の起点です。つまり開始時とは逆の操作によって時間調整が行われる日。

携帯電話の表示が01:59から01:00に切り替わった。

と書かれています。
これがこれから始まるお話の象徴となっています。

忌まわしい事件

 主人公ジェンは、ハロウィンのかぼちゃの置かれた窓辺で息子の帰りを待っています。
巻き戻った時間によって門限を守ったつもりになってこちらに向かうちゃっかり息子!愛しい息子トッド

ところが、何かが変だ!
暗闇から人影が近づく。
そして、あろうことか、息子はその人を殺めてしまうのです。隠し持っていたナイフで。
誰かの緊急通報(999)によって警察がやって来て、トッドは署に連行されました。
その夜の面会は許されませんでした。
さて、そんな出来事があった夜に母親は眠れるものだろうか?
と私は思うのですが、ジェンはいつの間にか眠りに落ちます。
でないと物語が始まりませんからね。

目覚めと同時に、切迫する苦しみがジェンを襲います。
ちらりと目を向けた窓の外、昨夜血だらけになった道路はきれいになっていました。

そして部屋から現れたのはトッド
「どうやって帰ってきたの?」
ジェン
どういうこと?
と戸惑うトッド

タイムトラベル

 一夜明けたこの時、彼女がいた場所は「昨日」だったのです。

この日を皮切りに、彼女の体験する時間は過去へと進むようになります。

そして読者もそのタイムトラベルに巻き込まれることに…。

まさかこんなことが…。
信じられないことながら、このような事象か自分一人に起きていることを知る彼女。
彼女は息子が犯した忌まわしい事件の記憶を残したまま、眠るごとに過去へ過去へと戻されてゆくのです。
たった一人で。
さらには、過去に向かうことの混乱が彼女を襲います。

例えばこんなこと。
このような事象に詳しい人はいないだろうか?
相談はできないだろうか?
彼女はタイムトラベルの研究をしている博士の存在を知り、連絡を取ろうと試みます。
彼にメールを打ち面会の依頼をするのです。
翌日、彼からの返信は無いか?と携帯を確認するもそれは認められず。
それもそのはず。彼女の“翌日”は、世の前日なのですから。
メールを送信してもいないその日に、返信があろうはずはないのです。

過去の出来事は、二度目にそこを訪れるジェンによって書き換えられていきます。
はじめ彼女は、息子のナイフをどうにかしようと画策しました。
それさえ取り上げれば・・・
しかし、これによって流れを変えることは叶わないのです。
前に!前に!前に!!もっと前に!
ジェンのトラベルは続きます。
息子の未来を変えるために、ことの真相に迫るために彼女は、動いてゆくのです。
“次の日”を迎えられない彼女が、目覚めたその日を懸命に生き、働きかける物語!
読者はページをめくりながら彼女とともに、タイムトラベルをすることになるのです。

ああ、おもしろかった!そして読後感はとても素晴らしいものでした。