負のものを統合する物語
『えんの松原』・・昨晩読み終わりました。
アーシュラー・ル・グヴィンの『ゲド戦記』~影との戦い~との共通項を感じながら読みました。
(映画版の『ゲド戦記は別物ですので混同しないで下さいね。)
「負のもの」「自分自身のもつ認めがたい部分」「その人の人生において生きてこられなかった側面」
そのようなものと対峙することによって人が成長する。
両書ともこのような骨組みを持っております。
対峙する相手が、片や「怨霊」であり片や「影」ということ。
物語の結末も似ていました。
物語のパターンとしてすでに定着しているのでしょう。
そのパターンを踏まえながらも、二つの物語は独自の世界を持ち、それぞれが違った味わいを持っております。
『ゲド戦記』の第1巻である『影との戦い』を私は、今まで何度読み返したことでしょう。
第4巻である『帰還』を何度読み返したことでしょう。
外伝の中に収められている『湿原で』も・・・。
カラスとハヤブサ
「鳥」も双方の物語の、大事な要素です。
人間の姿を保てなくなった憲平は、カラスとなり居を飛び出しますが、やがて力尽き地面に落ちます。
敵を追うべく、ゲドがとっさに取った行動はハヤブサとなることでした。
前ぶれもなく強い風が吹きはじめた。
前にもかいだことのあるいやなにおいがした。
風が落ち葉を吹き払い、目の前の鳥は徐々にその全貌を現した。
だが、見定めようとするより早く、陽が急速にかげった。
(『えんの松原』より。改行はkyokoによる)
一羽のハヤブサが大きな羽音を立てながらおりてきて、オジオンの手首にとまった。
タカ狩りのタカのように、それはそこにとまったが、ひもの切れはしをつけているわけでもなく、足環も鈴もどこにも見当たらなかった。
爪がオジオンの手首にくいこんだ。しまの入った翼は震え、丸い金色の目はにぶく荒々しく光っていた。
文章がね・・魅力的なのですよ。
下記に貼り付けたものは、以前投稿したものです。
ゲド戦記外伝のに収められている『湿原で』について書いたもの。
この小品が大好きなのですよ。
※Wikipediaによりますと、『えんの松原』をお書きになった伊藤遊氏は、京都のお生まれ、そして現在は札幌に住んでいらっしゃるようですよ。