お金持ちになるための指南・・・『老人ホテル』

 原田ひ香さんを知ってからというもの、彼女の作品を図書館の書棚で見つけるや、借りて読むようになった私です。
どれも面白かった!
うん、面白かったのですがね、実はそればかりとは言い切れない気持ちも味わいました。

話題作の一つ、『三千円の使い方』は、タイトルからも伺えるように、お金がテーマとなっております。
『財布は踊る』もそうでした。
先日読んだ『老人ホテル』も…。

『老人ホテル』

 彼女の作品は、「お金」をテーマにしたものが多いと感じます。
登場人物たちのお金との付き合い方…生き方そのものと言い替えることができる物語が展開するのです。

『老人ホテル』は、親からまともな愛情や教育を受けることなく育った若い女性「天使」をめぐる物語です。
天使は、何と!エンジェルと読ませます。
この名付けからして親の有り様が伺えるというもの。


 その天使が、資産家の老人から、お金持ちになるノウハウを学ぶお話です。
貯金もなければ、年金も支払わない、そもそも年金の何たるかも知らない天使。
彼女は、裕福なご老人数名が住まいとして利用しているホテルの清掃員として働いています。
居住者である一人の老人、綾小路光子に近づき、教えを請うのです。
天使と光子の関係や、教えを請うまでの曲折など、作品の内容には触れません。
とにかく光子は、天使に、健全に生きる方法を一から仕込んでゆくことになります。
どのようにして自分の持つ財力を揺るぎないものにしていくのかを!

その老人の指南は、天使を通り越して私にまで向けられているように感じます。
そうなると、私はただフムフムと傍観的にその教えを受け取ることができなくなります。
苦しくなる。

それが、冒頭で書いた楽しいばかりではない心境なのです。

 私の知らないこと、知ろうとしないことがあることに怯えてしまうのです。
投資のこととか、株のことやら。
自分のお金の管理があまりにずさんであったことにも気付かされるのです。
お金の管理だけではない。
我が子への教育態度や、
人生への向き合い方が、
ああ!あまりにも甘かったのではないか!
もはや手遅れなのではないか?

若い天使は今スタートしても遅くない。
でも私は…
等と気後れするような気持ちになったのです。

ただし!
です。

ひ香氏の作品は、お金を蓄える方法を披露するハウツー本ではありません。
もちろん!お金に関してぼんやり無自覚に暮らす読者を断罪する本でもありません。

人の幸せに直結すると言っても過言ではないお金は、必ずしもその額に応じて幸せも連動減増するものではないのです。

お金は知らず知らずのうちに負のもの、良からぬものも引き寄せます。
引き寄せるばかりか、人の内面に悪しきものが生まれ増殖する可能性も秘めています。

『老人ホテル』の結末部分は、それを伝えているのではないかしら?
と思いました。
著者の意図と違うかもしれませんが、私はそのように感じました。

『年収90万円でハッピーライフ』

 本の内容にはこれ以上触れず、次なる一冊をちょろりと紹介します。
これは、はてなでブログを書くある方の記事で知った作品です。
通りすがりの訪問でして、その記事を紹介することはできませんが、作品名だけはメモを残しました。
図書館にリクエストしたところ隣の地区の図書館が持っていました。
タイトルは
『年収90万でハッピーライフ』
こちらはフィクションではなく、大原扁理という方の実践書。
このタイトルを読み、『老人ホテル』を読みながら感じた気おくれを払拭できるかな?と思ったことは確か。
で、払拭できたのか?
どうでしょうねえ?
でもね、払拭するとか、そういうことを越えた大切なものをこの小さな本から得る事ができそうです。
「得ることができた」ではなくて、
「得ることができそう」
と書いたのは、まさしく言葉通りだからで、これを自分のものにするのは大変難しいと感じたからです。


 小さな一冊『年収90万円でハッピーライフ』については次回の話題にしようと思います。