何を目指したいのか??『年収90万円でハッピーライフ』

『年収90万円でハッピーライフ』

 どなたかのブログで紹介されていたこの本を読みました。
タイトルだけで一気に興味をそそられますよね。

軽いエッセイ風の文章ながら、その内容は私にとって、立ち止まって考える価値のあるものでした。

年間90万円で暮らすためには相応の節約が必要ですが、この本は、節約術だけを披露した本ではありません。

自分にとって価値のあるものは何か?を自分で定めていくことの大切さや心地良さが語られています。

上って何だ?! 

 話は変わりますが、先日勤務校の図書室で見つけた本『あずかりやさん』を紹介しました。
kyokoippoppo.hatenablog.com

主人公の青年桐島透は、大変優秀で、盲目ながら東京大学を受験するつもりでおりました。
学校の同級生からは「ソーリ」というあだ名で呼ばれてもいたのです。
生徒たちからの信頼厚く、彼も尊敬する先生に、
「君はもっと上を目指せるよ!」
と励まされて決めた進路だったのです。
好きな先生の言葉ではありましたが、彼の心には
「上って何だ?」
という疑問が湧くのでした。

 彼の心に湧いたこの言葉は、私の心にくっきりと残りました。
なるほど、あずかりや店主の人や物に対する真摯な態度、慈しみの姿勢はこの思いが起点となっているのだな。
青年は「上」を目指すことから降りて、あずかりや店主となったのです。
だからといって青年の目指すところが無くなったわけではありません。
別のものを目指すことにしたということね。
彼にとっての価値はそちらにあったということね!


『年収90万円〜』にも、これと同じ問いかけが一貫して発せられていると感じます。

そう!
「上」って何なのか?
ということです。

「上」を目指すことそのものを否定しているわけではないのです。
目指す先を何によって決めているのか?
と大原氏は問いかけているのです。
大原氏は人生の目標を
「嫌なことで死なない」
という地点に定めました。

わたしのこれまでの人生は、やったことより、やらなかったことばかりで出来ています。

やりたくないことを、削いでいき、仕事量も極力減らしていった結果年収90万円程で暮らせたよ。
ということなのです。

だってこの人本出してるじゃん?
印税入ってくるじゃない!
社会的成功に乗り遅れまくったといっても、本を世に出しているのだから、そこそこの成功してるといえるじゃない!?

本書を図書館にリクエストした時点で、私はそんなひがんだ気持ちを抱いておりました。


しかし、そんなひがみ根性は、本書を読むうち消えました。

タイトルは『90万円~』ですが、その数字が大事なのではない。

本を世に出したから成功!価値がある!!
と思う必要も無いのです。

大原氏の生活を、過度に讃える必要も無い代わりに、蔑む必要も無い!

簡単ではない!

 私は自分に必要なことを、知ろうとすれば良いだけ。
私にとって価値のあることが何なのか、自分で決められるようになれば良い!

簡単そうでとても難しい!
自分の命を閉じるまで追い続けるテーマになるかもしれません。

生き方に限らずですけれど、何がベストかっていうのはただの幻という気がする。

(『年収90万円でハッピーライフ』より。以下の引用文も同様)
あると思えばあるし、無いと思えば無いような、そんなもの。
人に決めてもらうものでは無いのです。
おお!
そうか!
と思いつつも、私にとってこれはとても難しい。
自分というものを、相手という鏡に映して眺めるクセが染み付いているのです。

自分のことを自分で知ろうとする。
自分のことを自分で判断できるように努める。

なるほど・・。

「上」とか「下」とか・・
「できる」とか「できない」とか・・・
私はまだまだこういうものに縛られて生きています。

それが私なら、まずはそうと認めて、
この先も生きてゆきましょう。
本や人との出会いを糧にしながら・・。

個性は外に求めるものでなく…
毎日コツコツ「自分」をやっていくこと。それをすっ飛ばして個性が形成されることはない。
そして人は年をとれば、イヤでもその人になっていく。
個性を大切にするためにできることはその人がその人であることを邪魔しないこと。

『年収90万円でハッピーライフ』はとても新鮮で素敵な一冊でした。


次回は、今年の自分をふり返ってみる予定です。