札幌東警察署にて

  前回は、出頭の依頼に応じるため急遽札幌へ出向き、東警察署の玄関に足を入れたところまでを書きました。
 その後更新までの間が空いたのは、ひいてしまった風邪のせいです。

続きが気になるであろう皆さんのお気持ちを焦らせよう!と企んだ訳ではありませんからネ。

熱も無く、鼻水が主なる症状でしたが、目の奥が疲れ、頭が重い状態の中、文章を手繰り寄せる作業に向かう気力がありませんでした。

更には、この季節、庭が私を呼ぶのです。
朝、出勤前の時間は庭のスギナ除去作業にいそしみました。
出てきた頭だけ掘り起こしても追いつかないことは承知のうえですが、他の花の根への影響を考えると除草剤は控えたく、毎年この作業に追われます。

 風邪の症状も落ち着いてきましたので、ようやく続きにとりかかれます。

「よっ」

 さてさて、警察署に入り、指定された部屋におもむけばそこは、広いフロアで数か所に仕切りが設けられておりました。
密室での取り調べっていう感じではありませんでした。

長机を挟んで、と調べを行う署員の方が向き合って座っており、さらに署員の後ろには、実直そうな坊主刈りの若者がぴしっと立っていました。
は、私を認めると
「よっ」
という感じで手をあげました。
気軽な再会という風情でね。  

とりあえず署員の方に挨拶を済ませ、私もYの横に座りました。
ここからの記述は、いまや曖昧になった私の記憶を掘り起こしつつ綴ります。

 署員の方は、まずはYに向け、
「お前、何でこっちの連絡無視し続けた?」
と問いました。
「何度も連絡入れたんだぞ!それにどこ行っていたんだ!!!!お兄さんの所から抜け出して…。」
一夜明け、Yに連絡を取ったもののつながらず、挙句に昨夜身柄を預けた兄宅からも姿を消していたことをまずは咎められました。
そりゃそうです。
温情により留置しなかったことが警察署の失態になりうる事態ですから。

「いやあ、どこからの電話かわからなかったから。」
Y
「でもオレ、ちゃんと折り返しましたよ。履歴見ますか?」
とどこまでも軽い乗り。

お前高校の先生相手にしてるわけじゃないんだぞ!
と思う私。

「まあ、いい!」

と署員の方はおっしゃり、改めて事実関係を問われてゆきました。

鉢合わせさせたくないだろ?・・・

 ざっと、記すとこんな具合。

は、バイクとバイクの免許が欲しかった。

●バイクを札幌の友達から譲り受けたので、それをもらいがてら免許取得をするつもりだった。
(バンド活動をしていることは話さなかったと思います。東京に住所があることはどうだったか???)

●札幌の知人(女性)宅に寝起きしていたが、彼女の入浴中に部屋を抜け出した。免許取得前ではあったが、バイクに乗りたくなったため。

SNSで声をかけ、遊んでくれる女性を募り、それに応じたTちゃんという子をバイクの後ろに乗せて走った。
二人乗りしているところをパトカーに見つかり呼び止められ、無免許であることが明らかになった。

を養う女性がおり、はそのヒモのような存在。
その女性はより年上。
若い女の子と遊びたく、部屋を抜け出してバイクを動かした。

警察にはそのように伝わるストーリーが出来上がっていきました。
その間私は全く口を挟めませんでした。

「お前・・あの道なら見つからないと思って走ったんだろ?こっちはなあ・・・ああいう道を走る奴こそ怪しいと思うんだよ。
署員の方は、その道のプロとしての貫禄を見せつけるように言いました。
「はあ、そうすか。」
みたいに聞いているY

の生育地が湧別であることに話が及ぶと、署員の方は懐かしそうに、網走(オホーツク管内)方面で勤務した経験を明かし、何と、Y君…過去記事にチラリと登場の彼…の名を知っていました。
その時ばかりは、と私の口から同時に驚きの声が出ましたよ。

自分の行いにより、親もろとも警察署に呼ばれ、このような事態になっているにも関わらず、落ち込む様子もなく、飄々とする
耳やら唇やらにピアスをつけ、勤務先も持たぬ
署員の後ろで控える同じ年頃の新人警察官と対象的なの姿でした。

 昨晩バイクの後ろに乗っていた女のコTちゃんも後からやって来たのではなかったか?(記憶あいまい)
SNSの突発的な誘いに応じだだけの人物とみなされ、すぐに帰されたと思います。
記憶は明瞭でないのですが、
「鉢合わせは避けたいだろ?」
という如何にも温情のこもる配慮の言葉を記憶しているからです。

そう・・・衝立の後ろではYを世話する女性までもが呼び出され、聴き取りが始まっていました。
Tちゃんの退室に際して、署員の方が気を聞かせ衝立の後ろの女性と顔合わせしないよう配慮して下さいました。

ナースです・・・

 署員の方は、私にむけ次のように言いました。

「お母さん!この子は絶対またやる!」
警察官としての確信に満ちた声。
「昨晩押収したバイクは本日お返ししますが、そばにある中古屋にてすぐに処分することをお勧めします。」
口を固く結び、頷く私。

「この件の沙汰は、裁判所での手続きを経て言い渡されます。」
こんなことが伝えられ終了となったものか?
そして
聴取はYの方が先に終わったと思うのです。
立ち上がりチラリと目を向けた私の耳に、彼女の
「ナースです。」
という声が聞こえたからです。

そう・・・・このように、映像よりも耳にした声の記憶が鮮明なのです。

え!!!!!?????

 倉庫から出されたバイク。
「バイクは手放してよ!」
強く伝えて、中古屋へ向かうと、何と休業日!
唖然・・。
これはどうしたものか!
再び警察署の倉庫へ戻り、再度預かってもらえるか確認しましたが、応じでもらえませんでした。
結局手近なところにある駐車場にそれを一旦置き、には近日中に処分することを強く念を押すことしかできませんでした。

 そんな、こんなをするうち、女性の聴き取りも終わり、彼女は警察署の駐車場でを待っておりました。
私が駆け寄りお詫びをする前に、彼女は私に対し両手を合わせ、詫びをいれる仕草を見せました。

「私が、そばにいながらごめんなさい!お母さんにまで迷惑をかけて。」
そう言うのです。
「こちらこそ!本当にすみません!」
と私。
何なんだ?
Yからは改まった謝罪の一つも無いのに、周辺の女たちが、さっきからあやまり倒している。

 その日私は世話になった長男Hのところへ顔を出し、そのまま泊まらせてもらうことになっていました。
夏でしたので、床で良いので寝かしてくれと頼んだのです。
札幌往復の交通費だけでも痛手に感じ、ホテルに泊まる事など考えない私でした。

私が、麻生へ向かうことを知ると彼女はすかさず「送ります!」
と申し出てくれました。
私は地下鉄で行くと伝え、Yもそれでいいよ、と言うものの彼女は譲らず、結局その言葉に甘えることにしました。

助手席に乗ったYは、ゆうゆうと寛ぎ、何とも不遜な態度。
しばらく走ると、車は路肩に寄り一人の女性を拾いました。

何と!
・・・・・・・
Tちゃん!
先程署員の方がテレビドラマの温情刑事のように、
「鉢合わせさせたくないだろう」
と便宜を図り退室させたTちゃんなる女の子なのでした。

「ええ?お知り合いなの?」
声をあげる私に対して
「当たり前でしょ。」

つまり、ことを面倒にしたくないために昨晩警官に見つかった段階で、TSNSで知り合った行きずりの存在にすること決めたというのです。

ナースなる女性とTちゃんは、Yの所属するバンドのファンとして顔なじみの仲だったというのです。

そうなんだ。

仲良く会話する若者たちの中で話のタネも見つからない私は、ただ静かに車に乗せられていました。

  *  *  *
 は、その日の朝のことを話してくれました。
朝からチャイムが鳴り、何だ?と思いながらようやく目を覚ますと、窓のところに人影があったそう。
窓をあけて見ると警察官が直立不動で立っていた。

ドアを明けたら、もう一人が
いきなり、
「お前!!!!!◯△□☆※⁈…」
と怒鳴り込んできた。
「待って下さい!兄ですけど!」
と答えたら
「はっ失礼しました!」
とすかさず姿勢を正したと。
弟は昨晩のうちに友達の家に帰ってしまった、と告げたということでした。


その晩は、ベッドを私に明け渡し、自分は一晩漫画喫茶で明かしてくれました。

 やれやれ、大変な数日でした。
は程なく、罰金の上、持っていた四輪の免許を取り上げられました。

の手持ち不如意だったため、
罰金は親が払ったと記憶しています。

失った四輪の免許は、その後が自力で手に入れました。


ポワトリン(バンド)時代。
この1件だけでどんな様子だっか想像できると思います。
その後は身体にタトゥーを入れました。

「こんなもの!年取ってしわしわになったら醜いシミに、しか見えないぞ!」
と脅してやりましたが、
は、これを、撤退しないためのもの、後ろを向かないためのものと称するのでした。

Yの指す「撤退」とか「後ろ」は、
普通の就職を意味するようでした。

そのうち、大麻でもやりだすのではないか?
そんな心配までしましたよ。
「みんなやってるから!覚醒剤とは別だから。」
こんな理屈を返すYが想像できたのです。

Yのその後はどうなっていくのでしょう。

記事を読みながら毅然とした親の姿が全く見えないことに、気づく方もいらっしゃることでしょう。
それに関して、様々な思いを抱かれることでしょう。
承知の上で書きました。


次回は「新聞報道されたY」です。