自宅学習期間の自宅謹慎

呼び出し 

 Y高校での3年間の最終盤。
3年生は自宅学習期間となっておりました。
自宅学習とは名ばかり、そんな時期に学習するものなどほとんどおらず、Yも日々遊び暮らしておりました。
そこへ学校から急な呼び出しが!
何事か?

2月末のこと。
3月1日の卒業式まであと数日という時のできごとです。

きっかけが何だったのか?詳しくは分かりません。
夜の学校に忍び込み備品を盗んだ生徒がいたというのが、その時の一番大きな事件らしく、その調べの過程で、他の生徒たちの様々なよろしくない行為が芋づる式に明らかになった、そのように受けとっています。

Yの行為は以下のもの。
友だち数人ととある部室をのぞいた際、そこが荒らされており、お金が散らばっていた。
これはラッキーとばかりにいただいてしまった。
その行いの真偽を問われ、「やりました」ということで自宅謹慎処分となりました。

Yが手にしたお金は数百円程度でしたが、学校側は額の程度での見逃しはいたしません。

そりゃそうです。
持ち物を荒らされた生徒は現にいて、Yはそれを知りながら、
それを単なる落とし物と勝手な解釈をして、自分のものにしたのですから。
夕方改めて、親も同伴の上説明を受け、処分を受けました。

(これは当時発行していた手書き通信に添えた絵です。このようなしょうもない事実まで読者の方に届けておりました。)
反省文を提出の上、反省の態度がみられれば卒業式に出席できると言い渡されました。

謹慎中の自由時間

 自宅謹慎とはいえ、そもそもが自宅学習期間であり、処分を受けたのは25日金曜日。
卒業式は3月1日火曜日です。
Yの日々は大きく変わりませんでした。

大変だったのは、先生方です。
休み返上で生徒宅を訪問しなければなりません。
しかもその時処分を受けた生徒は十数人。
類似したような出来事やら、小さな悪事の見張り役やら・・・
詳しいことは分かりませんが、名前があがった生徒は軒並み同様の処分を受けたようです。
Yと共にいた生徒のうち一人は、「お前も」と言われたお金の分け前を「俺はいらない」と受け取りませんでした。
しかし、彼も、友達(Y)のこの行為を見過ごしたことを理由に同じ処分を受けたのです。

Yは生徒指導の先生に、
「あいつは許してやって欲しい。」
とお願いしましたが先生は首をふりました。
「お前のした軽率な行為は、そうやって真面目な生徒にまで及ぶのだ!!!」
と諭されました。

Yは日誌のようなものを渡され、それに期間中の生活と反省の証を書き込むことになりました。
それには、一日の計画を24時間の帯グラフに書くようになっていました。

「起床は8時だな・・」
食卓テーブルにそれを広げ、書き始めたY。
「次は風呂だ!」
Yは「お風呂」と書き込みます。
「え??朝風呂って!ちょっと呑気過ぎないか??」
と私。
「え??だって正直に書いた方がいいでしょ。」
「せめて入浴って言葉使いなよ!」
「これでいいよ。」
お風呂・・・・ああ!休み返上で生徒宅の訪問をする先生方・・・それに引き替え朝風呂につかる優雅な生徒・・。
食卓に出てきた兄Hが面白そうにそれをのぞき、
「風呂のあとは一服か?」
とからかいます。
Yが友達の話を始めます。
「Rが喫煙で処分を受けたとき・・こうやって反省文書いていたら、そばにいた悪い先輩がわざとタバコの灰落として焦げあと作ったんだ。うける・・・」
お風呂の書き込みの後は夕方まで自由時間と鉛筆を動かすY。
「それ、あんまりだわ!!学習は??しないにしても書いておきなよ。」
「自由時間の中で勉強もするんだ。」

結局帯グラフはそのまんま。
反省の弁はなんとか書いておりました。

卒業

 この処分にあたり、反省の気持ちが見られたら卒業式前に処分を解くと言われておりましたが、学校側は盗難に関わったもの以外は処分を解くつもりだったのだろうと推測されます。
土曜日・日曜日・・と先生の訪問を受け、月曜日には晴れて処分を解かれました。

町の来賓を招いて行われる卒業式も、学校としては気の張るイベントのようです。
生徒の頭髪の状態が心配されるからです。
自宅学習期間ともなれば、多くの生徒が髪を染めてしまいます。
卒業式前に黒く染め直す生徒が大半ですが、時にはそのままのなりで登校してくる奴もいるのです。
教室には一時的にカモフラージュできるスプレーを用意して対応するそうなのです。

この期間Yの頭髪も見事に茶髪!
処分前は卒業式もそのまま登校するのだ!!
と息巻いていました。
「今までさんざ迷惑をかけてきたのだ。最後の日くらい迷惑をかけずに気持ちよく卒業なさいよ。」
私はそう言ったし、担任も同様のことを伝えたようです。

それに対しYは、
「卒業式のときぐらい意地通さんと!!」
などとめまいのするような返事をしておりました。
とても誠実でお優しい・・それだけに生徒に振り回され疲労困憊気味のD先生・・卒業式の朝までYの説得に時間をさくことになるのか?
他生徒との大切な別れの時間、神聖な時間をYがかき回すことになるのか??
Yは式には参加できず、校長室で一人証書をもらうことになるかもしれない・・。

そんな覚悟もしておりました。


が、この処分のあと・・・さすがにYは気持ちを変えたのでしょう。
黒色のカラーを使い茶髪を封じました。


良かった。
YはY校をなんとか卒業いたしました。

卒業後Yはすぐさま美容室へ行き、髪は水色へと変貌を遂げました。
 *   *   *
 次回からは卒業後のYを綴ります。
過激さが増しますよ。

 今回の処分品。


A3判の大きな画用紙に描かれた友達です。
かなりラフな筆使いながら、
「これYじ君でしょ!!」
・・・・・そっくりなのです。