田舎脱出

 春とはいえ、冷たい風が吹きすさぶ日が度々訪れ、マフラー手袋(しかも冬用の!)が手放せなかった私です。
 それでも我が庭は水仙が花盛り。
本日13日を境に、ようやく温かな日が続きそうな気配です。

ハマータウンの野郎ども

 今記事はYの進路についてを書きつつも、読書ネタとなります。
Yの高校時代、私の手元に長く置かれた一冊の本があります。

『ハマータウンの野郎ども』

イギリスの中等学校を卒業し、すぐに就職する労働階級の生徒のなかで、「荒れている」「落ちこぼれ」の少年たち=『野郎ども』。彼らのいだく学校・職業観はいかなるものか?学校はどのような進路指導をしているのか?彼らの形づくる反学校の文化―自律性と創造性の点で、たてまえの文化とはっきり一線を画している独自の文化―を生活誌的な記述によって詳細にたどり、現実を鋭く見抜く洞察力をもちながらも、労働階級の文化が既存の社会体制を再生産してしまう逆説的な仕組みに光をあてる。学校教育と労働が複雑に絡み合う結び目を解きほぐす、先駆的な文化批評の試み。

(アマゾンの商品解説より)

1996年の出版ですから現在の状況として読むことはできないのかもしれません。
 私は以前紙媒体の手書き通信を発行していました。(その頃から発信好きだったのね。)
この本の話題と共にYの有り様を綴った当時(2005年)のものが、残されています。
以下そこからの抜粋です。

 ウィリス(著者)は、未熟な言葉で短絡的に学校批判する彼らを、それを理由に軽んじたり戒めたりせず、その言葉のひとつひとつを記録に残しました。
修正加工されることなく取り出された言葉は、取り沙汰する価値があるとは思えないような俗っぽい戯れ言ばかり。
しかしウィリスはそれを丹念に読み解いてゆきます。
「努力をし、資格を取り、在学中から前向きで従順であれば未来は開ける」
という教師の言葉が、何故彼らにとって価値のあるものにならないのか?
彼らは何を嗅ぎ分け、その言葉に背を向けるのか?
自ら進んで落ちこぼれ、率先して社会の底辺ともいえる手労働社会に入ってゆくのか?
学校の権威やその指導を拒否した彼らが、イギリスの資本主義社会の下支えとなり、その構造に貢献してしまう事実をウィリスは指摘します。
野郎どもが嗅ぎ分けること、拒否できること、やわらかくユーモラスであること、(それらが文化と呼べるかはさておき)が、そのまま何の実も結ばず枯れてゆくのは、彼らが努力せず不まじめことの当然の結果だとして片付けず、社会構造や、学校制度にも、その問題のいくらかを差し戻してゆこうとするのです。

 野郎どもの生活を面白おかしく綴った書物かと思って読み始めたこの本。
ウィリスは当時のイギリスの社会構造に疑問を抱き、社会変革を促す立場で書いていたのです。
難しい箇所も多く、読むのに苦労した一冊でした。


 舞台となる国が違いますのでY校でのあり様が、野郎どもときれいに重なるわけではありません。
そもそもYは、ここで語られている「野郎たち」そのものとも重なりません。
ただ権威的なものへの懐疑心や、反抗心の現れなどは共通するものが見て取れ面白かったです。
Yという身近な存在が、この本を読み進む原動力となったことは確かです。
 
 確かな将来が約束されるわけではないないものの、それでも今後の生徒たちの行く道が明るいものであるようにと指導して下さったY校の先生方。
その思いをことごとくはねつけてきたYの行く先は如何に?

札幌へ・・・

 卒業時から少し時間を巻き戻します。 
高校3年生の秋。
進路を決め、それに照準を合わせた動きが加速する時期でした。
Yは、ただただ田舎脱出のみを目的とし、なんらかしらの専門学校へ進むつもりでおりました。

「製菓」にしようか?
「電気系」にしようか?

オープンキャンパスへ体験に行き、製菓はチャラい奴が適度にいて、電気はオタクみたいな奴が多かったなどと言い、自分が何をやりたいのか?など考えてもいないようでした。
出願の朝まで、決められずにいましたが、結局札幌電子専門学校へ出願。
いつ、面接なのだろうね。
と話しているうちに
「おめでとうございます!」
という合格通知が届きました。

来るもの拒まずの学校だったようで。

Yは颯爽と田舎を離れ、我が家を離れてゆきました。

ギタリストとして

 Yの当時の生活を、私はうかがい知ることはできません。
そして、何と!
と驚きの表現が適確か?
案の定というべきか迷うところではありますが、
その年の暮れには、この学校を去ることになるのです。

とあるビジュアルバンドから声がかかり、そこへ所属することになったのです。
この学校の学費支払いは4期払いというありがたいものでした。
「お母!学費払ってもオレもう行かないよ!払うと損だよ。」
親の懐を思うかのようなY独特の論法に、親の方も抵抗なく乗って、Yはポワトリンのギタリストとして活動していくことになります。
ポワトリン…
どんななりの、どんなバンドか?
興味のある方はお調べ下さいませ。


処分品貼り付けは見合わせます。
代わりに、はてな界で見つけた『ハマータウンの野郎たち』に関する記事を一つ貼りましょう。

hachiro86.hatenablog.com